「増える在宅医療」で重要な、痛みのコントロール(緩和)事情

増えている在宅医療とは?

「増える在宅医療」で重要な、痛みのコントロール(緩和)事情 class=
在宅医療が注目される様になり、中でもがん患者の緩和ケアについては本人だけでなく家族にとっても切実な問題です。

残された時間を心安らぐ自宅で過ごしたいと願う患者や家族の不安を取り除く為には多くのハードルを乗り越えなくてはいけません。まず入院時と同等の医療が受けられるのか?痛みを緩和する薬剤だけで大丈夫だろうか?と言った不安です。

入院時の様に呼べば直ぐ医師に診察してもらえる環境ではない点に不安を感じる方が多くいます。そこで大事な事は薬剤師と医療チームとの連携です。がん患者にとって在宅医療を継続するにあたり痛みは大きなテーマであり不安を感じるポイントになります。

地域で在宅医療について進んで取り組んでいる場合もありますが、情報を得られない方も少なくありません。第一にがん相談支援センターが入っている地域の拠点病院を探してみます。拠点病院にかかっていなくても情報を無料で提供してもらえますので、どの様な支援があるのか情報を得ると良いです。

モルヒネなど痛みを緩和する薬の活用

がんの緩和ケアで使われる鎮痛薬にはアセトアミノフェン等の非オピオイド系と、リン酸コデイン等の弱オピオイド系、モルヒネ等の強オピオイド系の3種類に分類されます。

痛みと言っても強さも様々で患者の状態に合わせた薬剤の準備が必要です。経口剤と一口に言っても細粒やシロップ、錠剤等の種類があり、年齢や飲み込む力・症状で判断します。他に注射や坐剤・貼り付け剤等があり、モルヒネ等強い緩和剤では患者が勝手に扱えない様に注入ポンプを活用するケースもあるので、24時間365日対応可能な薬局・薬剤師であるかどうかもポイントです。

一部の患者や家族の中には「モルヒネ」に抵抗を感じる方も多くいますが、提供された薬剤情報をキチンと確認し扱う上での注意点を確認します。処方された薬剤について相談する事も多くなるので薬剤師とのコミュニケーションが大事です。鎮痛薬は亡くなった後に返却しないといけないタイプがあるので、万が一の場合に薬剤師が回収してくれるのか事前に確認しておきます。

「自分らしく」が緩和ケアの基本

緩和ケアは痛みだけでなく治療や症状からくる吐き気や食欲不振・気分の落ち込み等を軽くする事です。多少の痛みを仕方ないと諦める事ではないので、辛い事があれば「つらい」と相談します。

どこに相談したら良いか判らない時にはかかりつけの医療機関でも教えてくれますが、地域のがん治療拠点病院にはがん相談支援センターを設けていますし、在宅緩和ケアセンターが近くにあれば活用すると良いです。

在宅での緩和ケアでは訪問医療・訪問看護・調剤薬局等の医療療養介護でチームを組んでいかなくてはいけません。患者を支える家族に対してもケアが必須になるので、社会的な制度体制等を活用して幅広い支援を受けておくと患者本人だけでなく家族にとっても大事です。患者が自分らしく過ごす為には自宅で受け入れられる体制が整えられるかが重要な課題になります。処方された薬剤の管理や治療方針を決定する責任者を家族の中で決めておくと、緩和ケアチームとの連携が迅速です。

在宅医療での緩和ケアの治療費はどの位?

一番気になるのは治療費がどの位かかるかではないでしょうか?平成20年5月末時点での緩和ケア医療費概算では緩和ケア病棟での入院時1日当たり3食付きで約39,720円です。

在宅の場合は医師の訪問1回につき約8,300円・看護師訪問1回につき約5,550円に加えて、交通費は患者側負担になります。他に在宅での1か月の基本治療費が約45,000円で、週1回(月4回)の医師の訪問・週3回(月12回)の訪問看護を受けると毎月総額約145,000円の概算です。

こんなにかかるのかと思うかもしれませんが、介護保険や高額療養費等の社会福祉制度を活用すると経済的な負担は軽くなります。但し介護保険は要介護度により内容や補助される金額も違ってきますので自治体に相談すると良いです。他に在宅で輸液や酸素療法等を行うと追加で医療費がかかるので注意します。実際は高額療養費の上限までになり、自己負担額は想像よりも小さいです。

この記事を書いた人

株式会社日比谷花壇 
フューネラルプロデューサー
金澤 和央(カナザワ カズオ)
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