相続税が現金一括納付できないときはどうすれば?

相続税を現金一括納付できないときは?

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庶民には縁の薄いものだった相続税ですが、税制の改正のおかげでぐっと身近な存在になってしまった、という人も多いでしょう。しかし相続したものが現金以外のもので、しかもさまざまな事情で処分して簡単に現金できない場合、相続税をどうやって支払ったらよいのでしょうか?

例えば自分が生まれ育ち父母が亡くなったので相続した古い家だけれども、土地だけは一等地で莫大な価値がある、というような場合にはどうしたらよいでしょうか?幸いにも亡くなった方と生活を共にしていた相続人が居住や家業を行う目的で不動産を相続した場合、「小規模宅地等の特例」を利用することで、最大80%まで土地の評価額を減ずることができるため、相続人の支払う相続税は非常に軽くなります。しかしそれでも、自分自身の十分な収入や財産が無い限り、現金一括で相続税を払うのには困ってしまう場合も多いのではないのでしょうか。自分が住んでいる、あるいは家業に使っている土地なので、簡単に退去して現金化することもできません。

そんな場合には、分割納付(延納)という方法があります。もちろん場合によっては最後の手段として物納ということも可能です。

分割納付の手続きは?

相続税は本来、現金で一括して納付することが原則となっています。しかし前記のように、現金一括で相続税を支払うことが難しい人には、一定の条件が揃っている場合、分割納付(延納)することが認められています。延納できる期間は原則として5年以内ですが、場合によっては、最高20年まで認められています。

延納の許可を受けるためには、納めるべき相続税が10万円を超えること、期限内に現金で相続税を一度に納めることが困難であることを国に認めてもらう必要があります。

延納を認めてもらうためには、延納申告書などの必要書類を、相続税を納めるべき日までに税務署長に提出する必要があります。また延納を認めてもらうには、担保の提供(延納税額が50万円未満で延納期間が3年以下の場合を除く)が必要な上に、利子税もかかります。

利子税は当然延滞税よりも安いのですが、それでも相続財産の中の不動産が占める割合や延納期間によって、年3.6%から年6.0%かかるので、注意が必要です。

物納が認められる要件

延納という方法をとっても相続税を納めることができない場合、現金の代わりに相続した物件そのものを引き渡すことも認められています。これを物納といいます。

物納を認めてもらうためには、物納申請書及び物納手続関係書類を期限までに提出する必要があります。そして対象となる相続財産は、日本国内にあり、法律で定められた種類のもので、物納適格財産と認められる場合に限られます。

物納ができる財産には、順位が付いており、まず不動産・国債・地方債・船舶・特定の美術品、それがない場合は社債・株式・証券投資信託など、それさえもない場合は、一般の商品などとなります。

物納申請をした場合には、利子税の納付も必要です。物納する財産の価額は時価より一般に低い評価を受ける傾向があります。また最初に述べたような「小規模宅地等の特例」の適用を受けた相続財産を物納する場合、収納価額は特例適用後の価額となります。このような場合には、物納ではなく、その土地を売却して現金を手に入れた後、相続税を支払ったほうが得になるので要注意です。

ただし物納を申請しても、許可が下りるまでの間はいつでもその申請を取り下げることが可能です。

物納適格財産と認められるもの

相続財産を物納する場合、納めるものが物納適格財産であることが必要になります。何をもって適格かというと、一言でいって、法的なトラブルを抱えていない財産であること、国が管理する価値がある財産であること、ということができます。

物納が不適格とされるのは、どのような場合でしょうか。不動産の場合を例にあげます。

権利の帰属について争いがあったり境界がはっきりしなかったりする土地は物納不可となります。担保になっていたり、差し押さえされたりしている不動産も物納不可です。相続人以外の他の者と共有している不動産も物納不可になります。建物に関して、それが古すぎて耐用年数を超えている建築物も物納できません。有害物質に汚染されていたり、暴力団が使用していたり、公序良俗に反する使われ方をされている不動産も、物納には不適格とされます。

その他、何らかの理由で管理するのに著しい費用と手間がかかる不動産も物納不適格です。

この記事を書いた人

株式会社日比谷花壇 
フューネラルプロデューサー
金澤 和央(カナザワ カズオ)
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