海外の「散骨」事情

葬儀の多様化で海外だけでなく日本でも増えてきた散骨

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葬儀の形式は、年々多様化しています。そのなかで自然葬の一つとして利用する人が多いのが、散骨による方法です。火葬を行った後、遺骨を自然の中に帰すことで、死者を弔う方法です。日本ではこれまで、遺骨は墓で管理する方法が、一般的にはとられてきました。しかし、従来の作法に縛られない人が増えると共に、散骨による葬儀の方法も次第に増えています。
散骨のメリットとして、自身にゆかりがある場所に最後は帰りたいという強い思いが叶えられる点にあります。自身が亡くなった後には、自分の思い通りに葬って欲しいと希望する人が実際には多くいます。
日本では、特に散骨に関しての厳しい規制はなく、基本的なルールの下でしめやかに行われています。また海外では、散骨がどのように捉えられているのか、気になるポイントでもあります。文化や生活環境が異なる海外では、それぞれに遺骨の扱いに関する事情も異なります。

墓地不足により散骨が推奨されている中国の事情

日本と同じく、東洋の文化圏にあるのが中国です。それだけに、中国ではどのような葬儀の事情があるのかが気になるところです。この国では、都市部で特に散骨が推奨されているという事情があります。
都市地域に人口が集中したため、埋葬するための墓地が不足しているのが、中国の現状です。都市部の土地価格が急激に上昇し、墓地の購入のために多額の費用が必要です。そこで、墓地の多額の費用確保の必要のない散骨の方法に注目が集まっています。
しかしその一方で、中国の人たちは先祖を敬う文化を持っている事情があります。先祖の墓に埋葬されたいという強い思いを持つ人も、中国には多いです。そのため、必ずしも散骨の方法が受け入れられているとは限りません。日本においてもこのの例と同様に、散骨の方法よりは、自身のルーツである大切な先祖の墓に葬って欲しいと希望している人もいる点は忘れてはいけません。

宇宙での散骨の例もあるアメリカ

アメリカでは、キリスト教を信仰している人が多く、墓地に埋葬する葬儀の方法が取られています。しかし一部において、散骨の割合が多い地域もあります。アメリカでは、各州により独自の法律が定められています。そのため実施には、各州のルールに従う必要があります。
散骨では、海や空から行われるケースが多いです。その際には、陸地から一定以上の距離が離れていることの規定も見られます。また、自然に帰す遺骨に関して大きさに関しても規定があり、一定以上のサイズに細かく砕くことが決められています。アメリカでは、散骨による葬儀を請け負う業者もいて、費用を支払いサポートのサービスが受けられます。
またアメリカは、宇宙開発の先進国であることから、宇宙への散骨を行うというレアなケースも存在する点は興味深いです。散骨は、希望次第で多様なルールや葬り方があるのが、アメリカの例からは分かります。

イギリスを始めヨーロッパで見られる散骨の傾向

海外で行われている散骨の事情を見ていく中で、ヨーロッパも注目したい地域です。この地域で散骨が頻繁に行われている国が、イギリスです。イギリスはヨーロッパの国の中でも特に、この方法で葬られる割合が大きいです。特定の場所にスキャタリンググラウンドという場所が設けられていて、そこでの実施が認められています。また、川に散骨するケースも多いのが特徴的です。
イギリス以外のヨーロッパの国として、スウェーデンもこの葬儀の方法を希望する人は多いです。スウェーデンは自然豊かな国であり、最後は雄大な自然の中へと葬って欲しいと考える人たちがいます。
もし日本から海外へ散骨のために渡航するのであれば、ヨーロッパの中でもイギリスやスウェーデンといった場所が適しています。また海外で実施するのであれば、現地で定められている法律や宗教上のルールには従うよう、心掛けが求められます。

この記事を書いた人

株式会社日比谷花壇 
フューネラルプロデューサー
金澤 和央(カナザワ カズオ)
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