遠方から葬儀に来られた参列者の費用負担のとらえ方と感謝の示し方

遠方からの参列者に交通費を渡すことは必要?

葬儀は思いがけないタイミングで発生することも多いものです。どんな時に葬儀が発生しても、故人への思いを強く持ち、万障繰り合わせて遠方から来られる参列者も少なくありません。喪主の中には、時間と多額の費用をかけて葬儀に出席してくださる参列者の負担が気になる方もいることでしょう。遠方からの参列者の宿泊費用や交通費への考え方ですが、参列者自身が負担するのが一般的です。葬儀は、招待してもらって出席するというものではなく、参列者の自発的な意思に基づいて出席するものです。そのため、喪主が交通費や宿泊費を負担する必要はないといえます。ただし、葬儀の際の費用負担が、親族間などであらかじめ取り決められている場合は、この限りではありません。

遠方からの参列者への感謝を表すには

原則として宿泊費用や交通費は参列者の自己負担となりますが、喪主は参列者が出席しやすいよう配慮することはできます。遠方から来られる参列者は土地勘がなく、宿泊先を確保するのに手間がかかることが予想されます。特に、宿泊先があまりない地域で行われる葬儀の場合は、宿泊先の手配を申し出るとよいかもしれません。また、葬儀場へのアクセスや行きかえりの利便性を考慮し、出席しやすい宿泊先の候補をいくつか提示して、参列者に選んでもらうこともできるでしょう。葬儀場が不便な場所にある場合、可能であれば最寄り駅までの送迎も検討できます。

時代の流れなどにより、葬儀は簡素化の方向に進んでいます。3等身以内の血縁の方はできる限り参列するのがマナーとされていますが、それ以外の方であっても、故人と親しくしていたなどの理由で、どうしても葬儀に出席したいと考える方はいるものです。その思いに対しては、宿泊費負担や車代など金銭的な形でお返しするのではなく、「よいお葬式だった」と感じられる葬儀にすることが喪主に求められているのかもしれません。

遠方からの参列者から香典を受け取ってよいか

遠方からの参列者は、交通費や宿泊などでかなりの費用負担が発生しています。そのうえ、香典までいただくとなると、気が引ける喪主も多いかもしれません。では、遠方から来られる参列者からの香典を、どう考えればよいのでしょうか。

まずは、香典が持つ意味合いを頭に入れておくと、どのようなとらえ方をすべきかが明確になります。香典は本来、故人の霊前に供えるもので、線香や花、焼香に用いられる抹香などの代わりになるものです。さらに現代では、お供え物を購入するために使ってほしいという意図が込められていて、弔慰金の意味合いもあって遺族に渡されます。そのような考えや背景があるため、交通費や宿泊費用を負担していただいたからといって、香典を辞退する必要はないといえます。

香典は、どの出席者に対しても同一基準を設けたうえで、あらかじめ告知しておくと、各参列者は故人をしのぶことに集中しやすくなります。香典を受け取る人、受け取らない人を葬儀の場で決めてしまうと、各参列者の心情をないがしろにしてしまう場合があります。ある人からは香典を受け取り、別の人の香典を辞退する場面を目撃すると、不公平に感じたり、トラブルが起こる可能性があるため注意が必要です。参列者は、出席している方それぞれの背景は知らないかもしれません。香典をいただくことに決め、遠方からの参列者に対して香典への謝意を表したい場合は、葬儀の場ではなく、他の形で示す方がよいでしょう。

葬儀の参列者には、出席いただいたお礼として、お菓子やお茶などを会葬御礼としてお返しします。会葬御礼を渡す時期は、四十九日が過ぎてから香典返しとして渡すのが基本ですが、最近では葬儀会場で「即返し」としてお礼を渡すことが増えています。費用負担をして駆けつけてくださった遠方からの参列者に対しては、近隣の方以上に謝意を表したいと考える喪主は少なくないでしょう。そのような場合、香典返しや即返しとは別に、お礼をすることも検討できます。

お中元やお歳暮で感謝の気持ちを表す

改まった形でお礼をする方法もありますが、相手の負担にならない形で感謝を表せる機会が、お中元やお歳暮です。通常のお中元やお歳暮の場合は、紅白の蝶結びののしが使われることが一般的ですが、葬儀の参列者向けには、のしや水引は喪中対応のものを使います。水引なしの白無地のかけ紙や無地の短冊を用いるとよいでしょう。短冊は略式になってしまうので、かけ紙を使うとお礼の気持ちが伝わりやすいかもしれません。お歳暮の時期にお礼を渡せなかった場合は、寒中見舞いとして贈るのが適当です。お年賀はおめでたい意味を持つので、葬儀のお礼にはふさわしくありません。感謝の気持ちを大切にすると同時に故人を偲ぶ心が伝わるような心配りをしていきましょう。

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