イスラム教のお葬式へ参列する際に知っておきたいポイント

イスラム教の葬送はどのようなものか?

イスラム教のお葬式へ参列する際に知っておきたいポイント
日本では仏教式の葬式が多いので、多くの場合、火葬で葬られます。
しかし、イスラム教の場合は土葬を行なっています。
これは、「死」というのは永久の別れではなく一時的なものであり、アッラーの審判の日に再び蘇ると信仰されているからです。

 

イスラム教徒が死亡した場合、教義上は24時間以内に埋葬することとなっています。
ただし、日本の法律では24時間以内に埋葬することは法律で禁止されている上に土葬ができる場所も限られていますので、防腐処理を行なった上で市町村長に届け出を行ない、埋葬することになります。
埋葬する際には、土葬許可証をもらう必要があります。
また、イスラム教式の葬儀の方法を知っていたり、土葬ができる葬儀会社は多くないので、早めに葬儀社を探しておくことが必要となります。

ちなみに、臨終の報せを受けたイスラム教徒は、「まこと、我らはアッラーのものであり、我らはアッラーの許へ帰るのだ」ということを意味する言葉を唱えます。

葬儀儀礼前の特色は?

日本では葬式をする際には、故人の遺体を棺に入れ、それを前にして行なうのが一般的です。
しかし、イスラム教の場合は、葬式を行なうのは遺体を埋葬した後となります。
それでは、埋葬するまで遺体はどのように扱われるのでしょうか?

 

まず、遺体は同性の親族、あるいは専門の業者によって洗浄されます。
ただし、夫婦が互いの遺体を洗浄する場合、または7歳以下の子供の遺体を親が洗浄する場合は異性であっても許されています。

洗浄が終わると、鼻の穴などに綿を詰めます。
そして、遺体を白い綿布で覆い、手、足、頭を縛ります。
この作業はカファンと呼ばれます。
なお、メッカに巡礼する人は白い綿布の服を着ますが、これがそのまま遺体を覆う綿布として使われます。

その後、遺体を埋葬地まで運んだら、埋葬前の礼拝を行ないます。
この祈りが、イスラム教で言う葬儀です。
これには、イスラム教徒でなくても参加することができます。
男性を前方、女性を後方にして祈ります。

埋葬するときは故人の頭がメッカ側に向くように埋葬します。

埋葬後の葬儀礼拝の意味について

イスラム教の葬送で最も大切なのは、葬儀です。
葬儀はイスラム共同体における共同の責務と考えられています。
イスラム教の葬儀礼拝の目的は、故人に対して神の許しを乞い、慈悲を願うことにあります。
つまり、「もしある人が亡くなって、その人のために100人が礼拝をしたとすれば、100人が神に取り成しを求めた」ということと同じであり、その取り成しは神に届くであろうとされています。

 

また、イスラム教の葬儀礼拝は、遺体が目の前になくても行なうことも許されています。
これによって、遠方に住んでいる親類縁者や友人達も故人のために葬儀を行なうことが可能となっています。
また、水害や事故、火事などで埋葬すべき遺体が引き上げられなかったり存在しないような場合にもこの規定は適用されています。

ただし注意しなくてはならないのは、葬儀儀礼を行なうのはどんな場所であっても埋葬が終わってからと決まっており、その前に葬儀儀礼は行わないことです。

葬儀儀礼の後にモスクで葬式を

埋葬が終わった後、遺族の近所にあるモスクで葬式が行われます。
葬式は通常、数日間続きますが、合同礼拝をするのは初日のみです。
男性は異教徒もモスクに入って礼拝に参加し、女性は遺族と共に後ろで礼拝をするか、遺族の家で過ごすかを遺族が決めます。
遺族は家族の死のショックや埋葬などで忙しいため、埋葬の手続きや葬式の準備は仕事関係者や友人がやることが多いようです。
また、日本の場合はモスクがそう多くはないので、数日間も葬式を続けられないこともあります。

 

イスラム教は審判の日に復活するという教えがあり、祖霊を祀るという感覚が基本的に薄いので、日本のように初七日や四十九日、一周忌といった節目に法事を行なうことはあまり一般的ではありません。

しかし、規定がないというだけですので、節目にコーランを読んだり、偲ぶ会を開いたりすることも自由です。
埋葬後の墓参りも行なわれます。

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この記事を書いた人

株式会社日比谷花壇 
フューネラルプロデューサー
金澤 和央(カナザワ カズオ)
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